逆流性食道炎とは、胃の入り口の締まりが悪くなり胃酸が食道へ逆流することで起こる食道の炎症のことをいいます。症状は、胸やけ・ゲップ・食物のつかえ感・胃の重苦しさ・おなかの張り・のどの違和感・声のかすれ・しつこい咳(せき)・ロの中の苦みなどが挙げられます。これは、食生活の欧米化・肥満・ストレス・加齢・飲酒・たばこ・猫背などが原因といわれています。また、食道には逆流してきた胃酸などを胃へ押し戻す働き(蠕動(ぜんどう)運動)がありますが、この働きが低下することも原因の一つです。
診断のためには、問診のほかに内視鏡検査(胃カメラ)が必要になることがあります。内視鏡検査は、ほかの悪性疾患でないことと実際の炎症の程度の確認のために行われます。
治療は胃酸の分泌を抑える薬や、胃の動きを調整する薬などの内服治療になります。これらの薬を数日間内服することで、ほとんどの人の症状は軽快しますが、逆流によって起こった食道粘膜の炎症は数日では治りません。また、胃の入り口の締まりが良くなるわけではないので、いったん症状が改善しても再発しやすいといえます。内服の中止は主治医とよく相談した上で決めたほうがよいでしょう。
日常での注意点としては、@食後すぐに横にならないA普段から背筋を伸ばし、前かがみにならないBベルトや下着などで締め付けないC適度な運動をするD脂肪の多い食事や甘いものは控える――といったことが挙げられます。逆流性食道炎は近年増加傾向にあります。思い当たることがある人は診察を受けてみてはいかがでしょうか。そして最後に、この病気は治療はもちろん大切ですが、日常生活の改善も重要であるということを明記しておきます。
上尾胃腸科外科医院 伊藤裕之