数年前の初夏の午後、救急車のサイレンと共に日焼けした中年男性が病院に搬送されてきました。屋外で小まめに水分を取りながら作業をしていましたが、突然倒れ込み意識が消失してしまったのです。体温40度、血圧は低下し (急性循環不全) 意識がなく (中枢神経障害) 、すぐに人口呼吸器が装着され懸命の救命・集中治療が行われました。その結果一命を取り留め、リハビリ治療を受けて退院することができました。
昔の内科の教科書には熱 (日) 射病と載っていますが、最近は屋内でも同様の症状が出ることから、暑熱環境に長時間いることで体が水分を失って起こる症状を広く熱中症と呼びます。特に幼少児と高齢者は脱水状態になりやすいので注意が必要です。近年、自分で動けない高齢者が真夏に屋内で熱中症になり、救急搬送されるケースが増えています。
初期の症状は脱力感、動悸(どうき)、口渇(こうかつ)感、疲労感、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、頭重(ずおも)感、目まい、失神、ふらつき、筋肉痙攣(けいれん)などがあります。治療の原則として、高温環境から涼しい室内へ運び安静にし、体を横にさせ、同時に水分やイオン飲料を摂取することです。可能であれば保冷剤を脇の下、脚の付け根に当てると良いでしょう。
意識喪失の時間と重症度はほぼ相関しています。意識障害が長く続くと死亡する危険が高くなることから、熱中症で意識がなければすぐ救急車で病院に搬送する必要があります。
ここ数年夏の猛暑が続いていますが、 「備えあれば憂いなし」と言うように、少しの注意が身近で大切な命を救うことになります。
こしきや内科リウマチ科クリニック 康浩一