毎年11月から翌年5月頃にかけて胃腸炎が流行しますが、その多くはロタウイルスとノロウイルスによるものです。それぞれ遺伝子のタイプが少しずつ異なるさまざまな種類が存在するため、一度感染しても免疫はできずに生涯にわたり繰り返し感染します。
ロタウイルスは主に生後6カ月以上3歳未満の乳幼児に感染しますが、まれに成人にも感染します。ノロウイルスは乳幼児から成人まで幅広く感染します。
潜伏期間は共に1〜2日程度で、発熱・下痢・嘔吐(おうと)の症状を起こします。症状が重症になると脱水症状を来しますが、その他にけいれんや脳炎・脳症などの合併症を起こすことがあるため乳幼児は特に注意が必要です。感染力は非常に強く、患者の便や嘔吐物に含まれるウイルスが手を介して口に入り感染する経口感染や、床などに残った嘔吐物が乾燥して空気中に飛沫(ひまつ)が漂い、鼻や口から入ることで感染する空気感染の経路もあります。なおノロウイルスは、同ウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を充分に加熱しないで食べることにより感染することもあります。
汚物の処理は希釈した次亜塩素酸ナトリウムを使いますが、ノロウイルスは85度で1分間以上加熱することでも死滅します。
通常、臨床症状や周囲の感染状況からウイルスを推定して診療がなされている場合が多いですが、診断には便中のウイルスを検出する検査キットもあります。
現在、日本では2種類のロタウイルスワクチンが発売されており、任意で予防接種をすることができます。共に接種可能な月齢に制限があるため、希望する人は出生後できるだけ早めにかかりつけの医師と相談して接種スケジュールを立てておくことをお勧めします。
上尾中央総合病院