現在妊娠中の方は、せり出してくるお腹と活発に動く赤ちゃんとともに期待と不安の日々を送られていることでしょう。妊婦健診で体重が増え過ぎと注意された場合、赤ちゃんのための栄養摂取と体重管理で迷うこともあると思います。妊娠中には一体どれくらい体重は増えても大丈夫なのでしょうか。
妊娠中の体重増加の推奨値は複数あり、基本的に妊娠前のBMI値を基準とします。日本産科婦人科学会は、BMI18未満で10〜12`、標準的な体格であるBMI18〜24で7〜10`、BMI25以上で5〜7`の体重増加を目安にしています。厚生労働省は、正期産の出生体重2、500〜4、000cを目標としBMI値18.5〜25の妊婦の体重増加を7〜12`としています。このような体重管理が必要な理由は、@妊娠高血圧症候群の予防A適正な出生体重B産科的異常の減少などの目的のためと考えられています。
妊娠前から肥満(BMI25以上)である場合は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、死産、巨大児、および子どもの神経管閉鎖障害などのリスクが高い傾向があると言われています。一方やせ型女性(BMI18.5未満)は切迫早産、早産、低出生体重児分娩のリスクが高い傾向にあります。妊娠中のみならず妊娠前の体重管理も安全な分娩のためには必要です。
妊娠中の体重増加の推奨値に関しての研究は少ないため明確な指標もありません。厳重な体重管理を行う根拠は乏しく、個人差を配慮した緩やかな指導が必要と思われます。妊娠中は栄養のバランスの取れた食事摂取を心掛けましょう。
(平成27年8月)上尾中央総合病院 古川隆正