厚生労働省の平成24年の調査では、糖尿病が強く疑われる人は950万人、一方、平成26年調査では、継続治療を受けている糖尿病患者は316万人でした。治療を受けていない糖尿病患者の多いことが分かります。糖尿病には何らかの原因で、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のβ細胞が破壊されてしまい、インスリンを注入しないと生きることが困難なT型糖尿病と、遺伝的要因や生活習慣として普段から過食や運動不足になることなどが誘引で発症するU型糖尿病とがあります。ほとんどの場合はU型糖尿病です。この場合、血糖を組織に取り込むインスリンの、膵臓での分泌量が減ることや標的の各組織で効きにくくなることなどが原因で、血糖の代謝が不十分となり高血糖状態となります。軽症例の病初期では症状がなく放置しがちですが、こうした高血糖状態が長く続くと将来さまざまな重い合併症が出てきます。中でも動脈硬化が進むことで引き起こされる全身の血管合併症に注意が必要です。比較的大きな血管が傷むと狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などになることがあります。一方、ごく小さい血管が障害されると、失明の原因となる網膜症、進行すると人工透析治療が必要になる慢性腎臓病、両足のしびれや痛み、知覚低下などの神経障害が起こります。こうした糖尿病による直接的な合併症の他にも、糖尿病の患者は高血圧、脂質異常症、痛風、肥満などを併せ持っている場合が多く見られます。糖尿病に限りませんが、重大な合併症を引き起こさないためにも早期診断・治療と継続治療が重要です。行政や企業が行う検診を積極的に受けて早期発見し、症状がないからと放置しないようにしましょう
(平成29年3月 榎本医院 榎本哲 )