現在妊娠中でこれから分娩を控えている人、せり出してくるお腹と活発に動く赤ちゃんと共に期待と不安の日々を送られていることと思います。健診で体重が増えすぎと注意されたけれど、赤ちゃんのためには栄養を取らないといけないし、妊娠中の体重は一体どれくらい増えても大丈夫なのでしょうか。
妊娠中の体重増加の推奨値については、2021(令和3)年6月1日に日本産科婦人科学会周産期委員会により新しく策定されたものが公表されており、妊娠前BML値を基準として「・低体重:BMI<18.8/12〜15s ・普通体重:BMI値18.5≦〜25/10〜13s ・肥満(1度):BMI値25≦〜<30/7〜10s ・肥満(2度以上):BMI値30≦/個別対応(上限5sまでが目安)」と以前の数値(1997年)より緩やかな数値になっています。このような体重管理が必要な理由は、(1)妊娠高血圧症候群の予防、(2)適正な出生体重、(3)産科的異常の減少などの目的のためと考えられています。
妊娠前から肥満(BMI25以上)である場合は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、死産、巨大児、および児の神経管閉鎖障害などのリスクが高い傾向があるといわれています。一方痩せ女性(BMI18・5未満)は切迫早産、早産、および低出生体重児分娩のリスクが高い傾向があります。妊娠中のみならず妊娠前の体重管理も安全な分娩のためには必要です。
妊娠中の体重増加の推奨値に関しての研究は少ないため、明確に合意が得られたものはありません。厳重な体重管理を行う根拠は乏しく、個人差を配慮した緩やかな指導が必要と思われます。妊娠中は栄養バランスの取れた食事摂取を心掛けましょう。
(令和2年9月)上尾中央総合病院